住まいづくりに役立つヒント

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愛犬・愛猫と共存する住まいづくり

かつては、犬は外で飼うもの、猫は自由な放し飼い、というイメージがありました。しかし現在は、交通事故や伝染病などから守るため、「完全室内飼育」という考え方が広まっています。では、人も犬・猫も共に住みやすく、快適な住まいにするには、どんな家づくりをすればよいのでしょうか。

共に暮らすために大切なこと

 犬や猫と一緒に住むことを考えた時、においや汚れの対策や、すべらない床材にするなどのトラブル対策が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、犬や猫と共に生きるためには、トラブル対策以上に「共に暮らしを楽しむ」ことが大切です。それは、「犬猫だから仕方ない」と諦めるのではなく、「こうすれば喜ぶだろう」と人間の勝手な考えを押し付けることでもありません。重要なのは、人間とは異なる犬・猫の生態や行動パターンを尊重し、住環境を整えることです。

三者が幸せな「三楽暮」

 金巻さんは「人」と「犬・猫」と「住宅」のいずれにも良い環境づくりとして、「三楽暮」を提案しています。飼い主が家で楽しく暮らせば、犬や猫もリラックスでき、その様子を見て飼い主も幸せを感じます。人が楽しく暮らすためには、犬や猫のケアがスムーズにできる家事の工夫が必要。
 例えば、効率的な収納スペースがあれば物を放置しなくなり、犬や猫も余計な誘惑がなくなって、散らかして怒られることがなくなります。壁面収納の下部に犬のキャリーバッグとトイレトレーを設置してみます。リビングがケージに占有されることがなく、他のインテリアに影響を与えませんし、収納のカウンター部はグルーミングのための作業台や収納台になります。汚れや傷がつく場所が制限されることで、家のメンテナンスも楽になります。こうして、犬には快適な居場所、人には便利なケアスペースになると同時に、経済的で快適な家という「三楽暮」が成立するのです。

三者が自然(楽)に生活するために、それぞれの得(楽)を考えると幸せの相乗効果が期待でき、住まいに対して満足度も上がる。

しつけをしやすい住まいづくり

 犬や猫がいる家では、傷に強い床材や壁材を選んだり、消臭対策や防音対策を重視する傾向にあります。しかしそもそも、犬や猫が家の中を汚したり荒らしたりする行動の裏には、ストレスが隠れているもの。そこを理解することなく、単に傷や汚れの防止対策を施すだけではストレスの原因を解消することができず、しつけにも集中できなくなってしまいます。
 まずは犬や猫の行動の意味を理解し、問題行動を起こさせる原因となるものを排除しましょう。そして、犬や猫が人との暮らしのルールを覚えるための「トレーニング=しつけ」をしやすい住まいを作ることが大切です。これは、犬や猫にもルールを理解させやすい住まいにするということ。そのポイントは3つあります。

ポイント1
「居場所の確保と制限」

 1つは、入っていい場所といけない場所を、段差やドアなどで明確に区切ること。場所にメリハリをもたせることで人が合図を出すタイミングもよくなり、犬や猫にも「扉や段差のある場所では一旦立ち止まる」といった「合図」「場所」「行動」の関連性が理解しやすくなります。特に犬の場合、「扉や段差のある場所では一旦立ち止まる」と覚えれば、これをお店の入り口や道路の段差など、家の外でも応用できるようになります。
 同時に、安心で快適な「隠れ家スペース」を確保してあげましょう。心の動揺があったときに逃げ込んで冷静になることができるので、穏やかで友好的な性格を養います。一方で、「居場所を制限」することも大事。犬は、自由を与えられた場所を「テリトリー」として管理します。その場所に入ってきた他人は、犬にとっては侵入者。そこで、自由に歩き回れる場所をリビングだけなどに制限すると、管理責任スペースが減り、ストレスが軽減されます。

 サークルは、リビングなど家族が集まる場所の一角に孤立しないよう設置しましょう。猫の場合は、勝手な外出はさせない「完全室内飼育」が推奨されています。運動不足からの肥満やストレス防止のため、立体的に運動できるような工夫を施すなど、空間の質を重視することが大切です。

犬のハウスをサークルで囲むと、隠れ家となるハウスとリビングとの間に適度な空間ができ、家族の活動空間との間に落ち着ける場所が生まれてハウスの快適性は高まる。

ポイント2
「見せない・触らせない」

 犬や猫にとって、触れるものは全てがおもちゃ。遊ばれて困るようなものは、あらかじめ触れられない場所に収納しておきましょう。特に、ゴミ箱は犬や猫には非常に好奇心がそそられるもの。口に入れると危険なものもあるため放置はNG。ゴミ箱は、倒せない、覗き込めないものにするより、「見せない」「触らせない」ことが基本です。おすすめは、収納の中にゴミ箱を組み込んでしまうこと。ゴミの投入口は犬や猫の頭が入らない大きさにします。

猫の場合はカウンターに登ることがあるため、投入口は天板ではなく扉や側板に設けるのが良い。

ポイント3
「欲求を満たす」

 爪を研いだり噛んだりしてもいい場所といけない場所が感触でわかることも必要です。

 猫の場合、床から90㎝程度の高さまでの壁を、爪が引っかかりにくい平滑な素材にすれば、自然に壁で爪とぎをしなくなります。しかし、爪とぎは生理的な欲求のほかにマーキングの意味もあり、猫にとって必要な行為。部屋の出入り口や目立つ角など、空間の区切りや目印となる場所に爪とぎ器を設置すると効果的です。好みは猫によって異なるので、個々に合わせてあげましょう。

床で爪をとぐのが好きな猫には、爪とぎ器をほんの少し上り勾配にしてあげると喜ぶ。

 犬の場合は、床を掘ろうとして引っかくことがあります。床材や目地などのにおいに反応している場合があるので、目地を撥水性のものに替え、定期的にワックスがけを行いましょう。しかし本来、犬は穴を掘ることが大好きなもの。掘りたいという欲求が満たされていないと室内での引っかきを誘発してしまうので、穴を掘ってもいい場所で、思いきりやらせてあげることも大切です。
 庭がある場合は、中におもちゃやおやつを隠した「穴掘り専用の遊び場」を作ってあげましょう。掘り出して飼い主のもとに持ってきたら、褒めてあげます。「掘るとほめられる」場所を作ることで、掘られて困る場所を減らせるのです。庭がない場合は、子ども用プールや衣装ケースなどに新聞紙や古くなったタオルなどを入れて代用を。

住まいの工夫

 しつけのしやすい住まいづくりを考えたうえで、騒音やにおい、傷など気になる対策を施しましょう。

● 騒音対策
 犬の吠え声の大きさは、体の大きさだけに関係するのではありません。室内に響いて人の負担になる場合は、壁や天井に吸音効果のある素材を採り入れましょう。
 窓への遮音対策は必要です。隣家への配慮だけでなく、外部の騒音を犬が「不審者」と勘違いするのを防ぐためでもあります。隣家や道路に近接する窓には、T1等級(約25dbの遮音性能)以上の防音サッシがおすすめ。カーテンにも遮音性のあるものを採用すれば、音漏れを軽減できます。

 においに対しては、通風換気がもっとも重要です。トイレは、室内の空気の流れの最終地点に配置を。猫には体臭はありませんが、フードやトイレはにおいの元。特に尿のにおいは犬の5倍といわれるほど強いもの。猫用は、人のトイレの内部や洗面所などに置き、換気設備を整えると気にならなくなります。また、においや汚れは目地に残りやすいので、床材には目地の少ないものを選ぶのもコツです。

空気の流れの最終地点にトレイを。換気扇の設置を検討する必要もある。

● 汚れ・傷対策
 トレーニング前や1歳半以下の仔犬は、床や壁、建具などを汚したり傷つけたりすることがよくあります。建具枠は硬質な素材を選択しましょう。また、廊下などの狭い場所の壁は、胴体のこすり汚れが付きやすいもの。壁の仕上げ材は、人の腰の高さもしくは犬や猫の体の高さまでを張り分けると、メンテナンスが下の部分だけですむので楽です。

 フローリングは粗相をしたり、ヨダレで床にシミが付くことも。ワックスをこまめにかけて、目地ごと撥水効果をもたせると良いでしょう。オシッコは手早く拭き取っても目地などにわずかなにおいが残ることがあり、その場所を「排泄ポイント」と認識して繰り返し排泄する原因になります。床材の奥にしみこんだにおいは消しきれないので、床材を張り替えなければなりません。
 猫の爪とぎによる傷は、先述したように爪とぎ器の設置が有効ですが、多頭飼育の場合は高い場所での爪とぎも増えます。耐傷性の高いクロスを採用すると良いでしょう。

壁の仕上げ材は、日常的に水拭きの頻度が高くなるので、摩擦に強い素材が望ましい

● 空気環境の維持
 犬や猫は比較的乾燥した地域で発達した生き物なので、一般的に湿気は苦手。かといって過乾燥でも皮膚への刺激となり、風邪ウイルスの活動も活発になります。また、乾燥すると静電気が起きやすく、毛が落ちてハウスダストを引き寄せやすい状態に。漆喰や珪藻土など、調湿効果のある建材を活用すると良いでしょう。
 暖房は、ホコリを巻き上げないものにします。犬や猫は毛に覆われていて、床暖房では長時間暖かい床に張り付いていれば、熱中症や呼吸器系疾患を起こすおそれがあります。体が接している部分は熱くなりすぎないようにセンサーで感知するタイプや、低温水式が良いでしょう。壁面に設置するパネル状のヒーターでもOK。床材に、桐やパイン、コルクなどの温かい素材を組み合わせると効果的です。

安全・快適のために

 犬・猫が安心して、快適に過ごせる住まいづくりの一例も紹介します。

● 床
 硬質タイプのフローリングやタイルは、素早く動くと爪がはじかれてしっかり蹴り込むことができず、滑って脱臼の危険性があります。特にダックスフンドなどの胴長の犬種には、腰に負担も。防滑性のあるタイルや、フローリングに滑り止めコーティングをする方法もありますが、キャバリアのような毛足が長い犬種は、足の毛の手入れを怠ると、普段から滑りやすくなるので注意が必要。毛足の長い犬種や動きの多い小型犬種、パッドが乾いてくる老犬の場合は、健康を考えると、爪を立てるとへこむくらいクッション性のある床材が好ましいでしょう。
 傷がつきにくい硬質な床材を選びたい場合は、表面にざらつきや凹凸のあるものを。ラグやカーペットを部分的に併用すると良いです。滑らない場所が家の中にあれば、滑りやすい床の上でも犬は気をつけて歩くようになります。取り外して洗えるタイルカーペットを組み合わせると、メンテナンスも楽。カーペットは、爪を引っかけて怪我をしないよう、目の詰まったタイプを選びましょう。

● 階段・段差
 階段の下りは足腰や、小型犬では背骨に負担がかかります。階段は、立ち入り禁止のしつけと組み合わせ、できるだけ使わせないようにするのが基本。どうしても使わざるをえない場合は、勾配を35度以下にし、直階段やストリップ階段は避けます。可能ならスロープの併設を。

クッション性をもたせ、滑り止めの効果を出すためにステップ部分にカーペットを敷いたり、段鼻にノンスリップ加工を施したりするとより安心。

● 猫アスレチック
 猫は立体的に空間を楽しむ生きものです。そのパワーを上手に発散する環境を整えてあげないと、ふすまやカーテンをよじ登ったり、ソファーに穴を掘るなど、勝手に行動空間を開発してしまいます。猫用階段や通路を工夫した「猫アスレチック」を作ってあげましょう。
 これは、家具の組み合わせでもできます。好奇心を刺激し退屈さを防ぐには、一部を造り付けや完全固定にしないのがコツ。移動できる箱型の家具を階段状に置いたり、市販のキャットタワーを造りつけのものと組み合わせたりと、形や位置に自由度を残すほうが良いでしょう。足元がぐらつくと嫌がって使わなくなるので、可動式のものもしっかり固定を。

よじ登ることは得意ですが、垂直に降りるのは苦手。安全に降りられるスロープやステップも用意してあげよう。

 ただし、「せっかく作ったのに遊んでくれない」というケースがあります。これは、「猫は高いところが好き」という誤解をしたまま設置しているからかもしれません。猫が木に登るのは、獲物が下を通るのを待ち伏せたり、自分を襲う相手から隠れるため。安全な室内に一匹で暮らしていれば、高い場所に上る必要はありません。ですから、そこに登れば家具の上に移りやすいとか、窓から外が眺められるといった楽しい仕掛けがあることが、猫アスレチックづくりには大切です。

犬・猫のための防災

 自然災害が発生した時、犬や猫は状況判断をすることができません。怯えて走り回ったり、パニックになって家から飛び出したり、家の中に隠れて出てこないことがあります。こうした状態でも落ち着いて避難ができるように備えておくことが重要です。
 日頃から隠れ場所として活用しているハウスは、災害時にも役に立ちます。動物が本能的に隠れ家に選びやすく、巣穴のようにもぐりこむタイプで、体がすっぽり入る程度の大きさがベスト。「キャリーバッグ」や「クレート」がちょうど良いでしょう。硬くて丈夫な素材を選び、さらに大きなサークルで囲んであげれば、落下物や家具の転倒から身を守ることもできます。

 被災時のペット用の物資は、人間の支援物資より数日遅れるものです。犬・猫専用の防災持ち出し袋を用意しておきましょう。食べ慣れた食料を最低でも2週間分準備します。持病がある場合は常備薬と診察履歴がわかるノートも。トイレのシーツや砂も必要です。

フードや水は日頃から使いながら補充をし、衛生と温度管理を行いながら常に新しいものに入れ替える。取り出しやすいハウス近辺に置いておくと、素早い避難が可能になる。

参考資料:「犬・猫の気持ちで住まいの工夫」(彰国社) 著者 金巻とも子


取材協力
一級建築士、家庭動物住環境研究家 金巻とも子さん
http://pal-design.jp/