住まいづくりに役立つヒント

賢く借りる、
返すために知っておきたい住宅ローンのコト

教育資金、老後の生活費と並んで人生の3大資金のひとつである「住宅購入費」。長期に渡って支払い続けるため、将来の金利上昇リスクや収入の変化なども考えて、住宅ローンを選びたいところです。そこで、今回は住宅ローンの賢い借り方、返し方のポイントをご紹介します。

取材協力 CFP®認定者(ファイナンシャル・プランナー) 上野山典広さん

頭金がなくても家が買える?

住宅の購入に必要なお金は「諸費用」「頭金」「住宅ローンの借入額」に分けられます。一般的に諸費用は物件価格の3~10%、頭金は物件価格の2割程度と言われています。一昔前は、住宅購入と言えば頭金を現金で用意するのが一般的でした。しかし、今では、頭金も借りられる「フルローン」や、頭金に加えて、住宅購入にかかる諸費用を含めて借りられる「オーバーローン」、中古住宅については、リフォーム費用も含めて借りられる「リフォーム一体型住宅ローン」も登場し、預金がなくても家が買えるようになりました。
しかし、諸費用、頭金は現金で用意するのが安心です。なぜなら、住宅ローンを支払えなくなったとき、オーバーローンを組んでいると、住宅の価格以上のお金を借りているため、ローン残債が住宅の売却価格を上回り、売るに売れなくなるからです。また、住宅は一般的に購入してすぐ1~2割値下がりするため、フルローンの場合でも、ローン残債が住宅の売却価格を上回る可能性が大きくなります。





また、頭金には住宅ローンの返済負担を軽減する役割があります。例えば、物件価格3000万円の住宅を購入し、住宅ローンの返済期間を35年とした場合【表1】、返済額について頭金無しの場合①と、有りの場合②を比べてみましょう。頭金を用意した方が約40万円支払額が少なくなり、毎月の返済額も、約3千円少なくなります。したがって、頭金、諸費用は現金で用意した方が負担が少なく、万が一の場合も安心と言えるでしょう。 ただ、必ずしも頭金ができてから購入したほうが良いわけではありません。今は、マイナス金利政策の影響などで住宅ローンの金利が低水準です。今後の金利上昇リスクを考えると、今のうちに住宅ローンを組んでしまうのが得とも考えられます。 例えば、頭金100万円を用意するために、毎月5万円ずつ2年間で貯めるとします。この2年の間に、金利が0.1%上昇すると、頭金を用意したときの方が支払額が約24万円多くなります③。 長期に渡って住宅ローンを支払うリスクや支払額、金利の上昇リスクなど考えて、自分にとってもっともよい支払い計画を検討しましょう。

まずはキャシュフロー表の作成を

多くの金融機関で、住宅ローンの相談会が開かれています。これに参加するに前に、まずは家計の状態を把握するために、分かる範囲で良いのでキャッシュフロー表(CF表)を作成しておくのがおすすめです。



CF表は金融機関でも作成してもらえますが、それが将来の予測を含むものである以上、作成者の判断が含まれます。自分が納得できるCF表を得るために、ある程度は作成しておくのがおすすめです。 CF表は日本FP協会のウェブサイト(https://www.jafp.or.jp/) CF表とは、子どもの学校入学や車の買い替えなど、家族のライフイベントや、将来の収入、支出の変化、貯蓄額などを一覧にしたものです。
これを作成することで、長期に渡って住宅ローンを支払うのに問題がないかをチェックすることができます。特に、子どもの教育費がいくら必要か、定年退職後も住宅ローンを支払い続けられるかなど、収支が大きく変化する箇所を確認しましょう。で入力するためのフォーマットをダウンロードできます。

キャッシュフロー表の書き方

まずは家族の年齢とライフイベントを記入しましょう。ライフイベントは、子どもの小学校入学や、世帯主の定年退職など家計の収支に影響を与えるものを記入しましょう。次に、収入欄を記入します。収入は手取り収入(可処分所得)を記入します。会社員の場合、可処分所得は、給与収入から社会保険料、所得税、住民税を引いた額です。自営業者の場合は、事業収入から社会保険料、所得税、住民税、必要経費を引いた額になります。不定期な収入は「一時的な収入」に記入します。
次に支出欄を記入します。車両の購入などライフイベントに伴う支は、「一時的な支出」に記入します。 収入合計(A)から支出合計(B)を引いた額が、年間収支です。その「年間収支」と前年の「貯蓄残高」を合計したものが、その年の貯蓄残高になります。この貯蓄残高が増えていれば、年間収支で一時的にマイナスの部分があっても、ひとまず家計は健全だと考えられます。

住宅ローンの主な種類

住宅ローンは大きく分けて、公的な住宅ローン、民間の住宅ローン、公的な機関と民間の金融機関が提供する住宅ローンの3種類があります。公的なローンは、一般的に申込者本人に対する条件が比較的緩やかです。また金利は、固定金利型が多く、財形住宅融資は5年間固定金利型です。 固定金利型は、固定期間中は返済額が変わらない安心感がありますが、現在は変動金利型より金利が高めです。また、借入限度額は民間のローンに比べて低めに設定されており、一般的な民間銀行のローンが1億円であるのに対し、財形住宅融資では4千万円です。
民間のローンは、物件に対する条件が比較的緩やかです。また、金利タイプが豊富で、変動金利型や固定期間選択型、全期間固定金利型などさまざまな商品の中から自分に合ったものを選ぶことができます。 フラット35は全期間固定金利型です。金融機関によって金利や事務手数料が異なります。



賢い借り方、返し方

賢い借り方、返し方のポイントは、トラブルに対応できるよう資金的な余力を残して返済計画を立てることです。なぜなら、生活費やちょっとした贅沢に使うお金は減らせますが、住宅ローンはどうしても支払い続けなければならないからです。 したがって、毎月の返済額は安心して返せる額に設定するのが原則です。ただ、老後の負担にならないよう、退職までに完済するのが安心です。 返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」の二種類があります。
元利均等返済とは、元金と利子の合計額(毎月の返済額)が一定になるように返済していく方法です。毎月の返済額が一定なので返済計画が立てやすくなります。元利均等返済は、返済額を抑えながら一定額を返済していきたい人におすすめです。
一方、元金均等返済とは、毎月の返済額のうち、元金部分を一定にして、その時点でのローン残高に応じた利子を上乗せして返済していく方法です。返済スタート時点では、ローン残高が多いので、利子も多くなり、毎月の返済額は多くなります。元金均等返済は、早期にローン残高を減らして、将来の返済負担を軽くしたい人におすすめです。



どっちがお得?

返済期間が同じであれば、利子が少なくなる分、元金均等返済の方が総返済額は少なくなります【表2①】。したがって、返済開始当初の返済額が無理なく支払えるなら、元金均等返済で返済した方が有利です。 しかし、元金均等返済で返済する余裕があるなら、元金均等返済の毎月返済額の範囲内で、元利均等返済を行うのが最も総返済額が少なくなり、返済期間も短縮されます【表2②】。
住宅金融支援機構のウェブサイト(https://www.jhf.go.jp/simulation_loan/index.html)では、複数の返済プランをシミュレーションできます。どちらの返済方法が良いか、ライフプランに合わせて検討してみましょう。



余裕があれば繰り上げ返済の検討を

繰り上げ返済とは、月々の返済額とは別に、元金の一部または全部を返済することです。前倒しで返済することにより、元金にかかるはずだった利子をなくすことができるため、総返済額が減ります。繰り上げ返済には、返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を少なくする「返済額軽減型」とがあります。
例えば、月々の返済額を減らすために長期でローンを組んだために、完済予定が定年後になっているような場合は、余裕ができた時点で期間短縮型の繰り上げ返済を行うのがおすすめです。ローンの期間はそのままで、月々の返済額を減らしたい場合には、返済額軽減型がおすすめです。 利子を少なくする効果が高いのは期間短縮型です【表3】。
期間短縮型を選択した場合、返済期間は1年4ヵ月短くなり、利子は、約107万円少なくなります。一方、返済額軽減型を選択した場合、利子は約42万円少なくなります。
繰り上げ返済を行う場合は、教育費や生活費、万が一の出費を考えてある程度の貯金は残しておくように注意しましょう。また、手数料が必要になる場合もあり、金融機関などによって金額が異なるので、事前に確認しておきましょう。





借り換えで返済額の軽減を

借り換えとは、現在の住宅ローンから、より有利な条件の住宅ローンへ借り入れし直すことをいいます。借り換えには、事務手数料などがかかるため、その費用を差し引いても返済の軽減が見込めるかどうか検討する必要があります。一般に、借り換えで効果があるのは「住宅ローンの残高が1,000万円以上ある」「借り換え後の金利が1%以上低くなる」「住宅ローンの残年数が10年以上ある」という条件を満たす場合です。
ただし必ずしもこれらの条件全てを満たす必要がある訳ではなく、例えば、金利差が0.5%でも効果がある場合もあります(【例】参照)。借り換えで返済額を軽減する効果があるか、前述の住宅金融支援機構のウェブサイトや金融機関でシミュレーションできます。



利用できる制度

住宅購入にあたって利用できる国の支援制度のひとつに「住宅ローン減税」があります。住宅ローン減税とは、返済期間10年以上の住宅ローンを利用して、住宅の取得などを行った場合に、10年間、各年末のローン残高の1%を所得税(前年分の所得税から控除しきれない場合は翌年の住民税)から控除する制度です。2019年10月の消費税増税に伴い、控除期間が13年に延長される特例措置も用意されました。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、入居期限に関する要件が緩和されました。ほかには、「フラット35」に子育て支援型、地域活性化型があります。これは子育て支援やUターン支援などのために、地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、地方公共団体による補助金交付などとセットで、「フラット35」の借入金利を一定期間引き下げる制度です。 子育て支援型も地域活性化型も、「フラット35」の当初5年間の借り入れ金利が年0.25%引き下げられます。「フラット35S※」と併用すれば当初5年間の借り入れ金利は0.5%引き下げられます(2021年3月31日までの申込受付分に適用)。※省エネルギー性、耐震性など質の高い住宅を取得する場合に利用できるもの。返済開始から一定期間フラット35よりも低い金利が適用される。