巻頭特集

くつろぎの工夫

 

「くつろぎ」と聞くと、開放的な空間でゆったりと体を休めている様子が思い浮かびます。
しかし、ヨガで体をリセットしたり、大好きなピアノを弾いたり、中には気の置けない友達と心ゆくまで喋ることで「くつろぎ」を感じる人もいます。それはきっと、体を休めることより、心が解放されることを求めているからでしょう。このように、「くつろぎ」のスタイルは人それぞれ。
今回はそんなさまざまな「くつろぎ」を叶える空間の工夫をご紹介します。

 子育てや家事、仕事に追われて疲れてくると「ちょっぴり贅沢な旅館で、のんびりと温泉につかり、おいしいものを食べてくつろぎたい」などと思う人は多い。しかし、実際に願いが叶って出かけた後、家へ帰ってみると「やっぱり、家がいちばん落ち着くな」と思う人も多いのではないだろうか。つまり、くつろげるか否かは内容や質だけでなく、内か外かによる部分も大きいということだ。出先でどんなに心のこもったおもてなしを受けても、外は外。どこか緊張感があり、心を100%解放することができないのだろう。やはり人が一番くつろげる場所は内である家。そこをしっかりくつろげる場所にしておくことが、元気を保つコツだとも言える。そこで難しくなるのが、家事を担う主婦にとっての家のあり方。さっきまで、掃除や洗濯、子育てに追われていたその場所で、気持ちを切り替えてくつろぐためには、何らかの仕掛けが必要なのでは?そこで今回、空間を瞬時に切り替えることができるアイテム「かおり」と「あかり」に注目した。



「かおり」が創るくつろぎ

 洗練されたマンションの一室。扉を開けると、まるでオーガニックコスメ店に入った時のように、ふわっとナチュラルなかおりが迎えてくれた。ここは、アロマセラピストの折立(おりたて)さんのお友達のご自宅。時々お二人でアロマ講座を開催している場所なのだそう。「肩の力が抜けるような、心地よくて上質な場所に来た感じがしませんか?家事や育児、日々の生活に追われる中で、気持ちをリラックスさせ、心を豊かにしてくれる、それがアロマの魅力です。私が言うアロマは、花や木などから抽出された100%天然由来の植物精油のかおりのこと。合成香料のような強さや持続力はありませんが、包み込むような優しさがあり、実用的な効果効能も期待できます。嗅覚は五感の中で最も原始的な感覚だそうで、本能や感情にダイレクトに働きかけ、快、不快を瞬時に感じ取り、自律神経やホルモン調節に作用すると言われています。だから、上手に使うと、心身ともにリラックスさせることができ、アロマテラピーとしてヨーロッパでは医療の現場でも利用されることがあるんですよ。そんなアロマを多くのみなさまに知っていただき、いつもの家に彩りと、心地良さを添えていただきたいですね」と言う折立さんに、アロマテラピーの基本と、アロマを使った空間づくりについてうかがった。

オーストラリア国家資格クリニカルアロマセラピスト
ARTQ認定 ブレンディングフォーミュレーター
折立 美奈子さん

北摂・豊中にて香りのアトリエ(アロマスクール&サロン&ショップ)「アトリエ・ティロワール」を主宰。植物から抽出された上質なオーガニック精油やプロダクトを使って、アロマセラピーのスペシャリストとしてお一人お一人の心と身体の状態に合わせた香りのカスタマイズ、トリートメントケア、その他香りの活用法などの提案を行っている。
アトリエでのレッスンの他に企業・団体様でのセミナー開催、イベント企画プロデュース、アロマ空間演出の提案など幅広く香りに関わる活動を行っている。

HP : https://tiroiraroma.com/
Facebbook Page:https://www.facebook.com/tiroiraroma/
Instagram:https://www.instagram.com/atelier.tiroir/

初心者のための精油選び

初心者はまずは、一般的に人気が高く、手に入りやすい10種類の精油を覚えましょう。

: 気分を上げ、やる気を出してくれるアロマ   : 心を穏やかに鎮めてくれるアロマ

イランイラン
甘くエキゾチックな香り。緊張感を解きほぐし、心身を安定させてくれる

オレンジ
なじみやすい香り。 リフレッシュ効果があり、落ち込んだ心を温め、気分を前向きにさせてくれる。

ジュニパー
木々を思わせる香り。心身を浄化する作用があると言われ、頭をスッキリとさせてくれる。

ゼラニウム
ローズを思わせるような甘みとフルーティーな印象の香り 。心身共に、バランスを調整してくれる。

ペパーミント
清涼感のある香り。 刺激効果で脳の働きを活性化。殺菌・消臭にも効果的。

ベルガモット
気品のある柑橘の香り。心の鎮静と高揚のバランスを調整してくれる。

ユーカリ
清涼感が高く、シャープな香り。抗菌・抗ウイルス作用に優れ、風邪の時の喉のケアにも有効。

ラベンダー
心地よいハーブ調の花の香り。心身をリラックスさせ、安眠効果があることでも知られている。

レモン
爽やかなシトラスの香り。 頭の中をクリアにし、集中力を高めてくれる。部屋の空気浄化や風邪対策にも有効。

ローズマリー
スッキリしたさわやかな香り。記憶力を高めてくれる。また、疲労回復にも有効。

精油(アロマ)の取り入れ方

精油はかおりとして嗅覚から取り入れるだけでなく、
吸ったり触れたりする中で効果的に体内に取り入れることもできます。

〈 嗅ぐ 〉

〈 吸う 〉

心に対する働きかけ。精油成分が脳を刺激し、エンドルフィンやアドレナリン、セロトニンなどの分泌に作用。情緒を安定させたり、逆にウキウキさせたりする。

例)ディフュザーによる拡散やアロマスプレーの噴霧など

体に対する働きかけ。呼吸器(肺)から血液に入り、有効成分が体内をめぐり、作用すると言われている。主に呼吸器系の不調の緩和に役立つのだそう。

例)精油やハーブを入れたハンドバスやお風呂などスチームでの吸引

〈 触る 〉

皮膚に対する働きかけ。殺菌消毒効果なども期待されているが、心と密接に関係し、マッサージによるリラックス効果で血流が促進され、新陳代謝を促すとも言われている。

例)アロマオイルやクリームによるマッサージなど

くつろぎをつくる
空間 × かおり

かおりにはそれぞれに表情と効果があるので、空間のテイストや用途に合わせて使い分けることでより効果を発揮してくれます。

かおりは身近なものを使って楽しむことができる。サシェや石けんなどのクラフトに精油を使ったり、ティッシュやハンカチに数滴垂らしてバッグの中に入れておくだけでも、ふとした瞬間にアロマの効果でリラックスできる。

Living
リビング

リビングは朝、昼、夜で用途が異なるので、時間帯によってアロマも使い分けてみてはいかがでしょう。

朝からの撮影だったので、床に置かれたアロマディフューザーからは、オレンジ、レモン、ラベンダーをブレンドした爽やかなかおりが。テーブルに置かれたポプリからはほんのりイランイランがロマンティックに香る。


{ オススメの精油 }


目覚めの良い爽やかなアロマ
ペパーミント、レモン、ローズマリーなど


お客様をお迎えする上品で華やかなアロマ
イランイラン、ゼラニウム、ベルガモットなど


1日の疲れを癒すアロマ
ラベンダー、オレンジ、ベルガモットなど

プリザーブドフラワーなどを使ったポプリやリードディフューザーは見た目にも華やか。お客様を迎える玄関やリビングに。

超音波式のアロマディフューザーは使用する場所の広さと使用できる精油に注意して重曹に精油を添加して床に撒き 購入しよう

Bed room
寝室

睡眠には、アロマがとても効果的。自分に合った香りを見つけて、深い眠りを実現しましょう。ディフューザーがなくても、ティッシュに1~2滴精油を落として枕元においたり、サシェでパジャマや枕に香りをつけておくだけでも十分楽しめます。

花粉症をお持ちのご夫婦の寝室には、空気清浄機能付きのアロマディフューザーが。ブルーやグリーンのライトが眠りを誘う。精油はラベンダーとカモミールをブレンドしているのだそう。


{ オススメの精油 }

心を鎮めて、緊張を和らげるアロマ
サンダルウッド、ラベンダー、ベルガモットなど

パジャマと一緒にサシェ(コットンなどに精油を染み込ませたにおい袋)を引き出しに。ほどよくかおりが移り、お好みのアロマに包まれながら眠れる。

ろうや石けんに精油を混ぜてお好みのアロマバーに。防虫効果のある精油を使って、クローゼットに吊り下げればかわいい防虫剤のできあがり。

Bath room
浴室

湯気が立ちこめるお風呂では、器具を使わなくても、かおりが拡散するので、精油を落としたバスソルトやボディソープを使うだけでも、アロマの効果が期待できます。また、アロマキャンドルやアロマライトなど、あかりとのコラボで、より効果的にリラックス!

かおりが立ちやすいお風呂ではバスソルト、ボディーソープ、せっけんなど、さまざまなキャリア(かおりを添加するもの)でアロマが楽しめる。また、保湿効果や血行促進など、精油に期待されている効果も試してみよう。


{ オススメの精油 }

身体を温めながら緊張をときほぐしてくれるアロマジュニパー、ゼラニウム、ラベンダーなど

かおりが混ざりすぎないようアロマキャンドルは一つだけ。

全身に使える手作りのアロマソープは置いておくだけでもほのかに香る。

天然塩に精油を落としたバスソルト。

十種のハーブがつまった手作りハーブボールはスキンケ アに。

くつろぎのメソッド
アロマを使ったちょこっとアイデア

 

〈重曹× アロマで消臭・殺菌効果〉
重曹には、油脂汚れを落とす効果や消臭、吸湿などの効果があると
言われていますが、消臭や殺菌効果のあるアロマをプラスすること
で、相乗効果を図り、同時にかおりを楽しむこともできます。

●キッチンまわりの雑菌やイヤな臭いに効果的な香り
 オレンジ、レモン、ペパーミント、ローズマリー、ユーカリなど
●風邪・インフルエンザ予防、花粉症対策に効果的な香り
 ティートリー、ペパーミント、レモン、ユーカリ、ラベンダーなど

重曹に精油を添加して床に撒き 購入しよう。掃除機で吸うと、排気口からいいかおりが。殺菌や消臭効果のある精油を使うのがオススメ。重曹100gに対し精油20 滴程度。

精油を添加した重曹を瓶などに入れてくつ箱に設置しておくと、消臭や除湿の効果が期待できる。また、くつ箱を開けるたびに玄関先にいいかおりが広がる。

 


〈アロマで省エネ・節電対策〉
アロマを上手に使うことで、暑さや寒さを体感的に緩和させることが
できます。その結果、節電にも役立てることができます。

●体感的な涼しさをもたらしてくれる香り
 ミント系(スペアミント、ペパーミント)、レモン、ユーカリなど
●体感的な暖かさをもたらしてくれる香り
 ジンジャー、オレンジ、シナモン、ベンゾイン、サンダルウッドなど

エアコンや冷風扇の吹き出し口近くに精油を染み込ませたキャリアを吊れば、部屋中にかおりを拡散させることができ、ミントなど清涼感のあるものを使えば涼しさもアップ。 ※機種によっては故障の原因にもなりかねないので吊るす場所には要注意




Information

〈パソナ women's career college〉
アロマ de ナチュラルライフ講座
チャームアップコース 講師 : 折立美奈子
全5回のシリーズ。アロマテラピーの基本から生活の中への取り入れ方などが
学べます。(単発受講可。アロマクラフト実習付)
6/19(木)から毎月第3木曜日開講予定。(6/19、7/17、8/21、9/18、10/16)
お申込みは http://www.pwcc.jp/calendar/ ( women's career college HP)

出張アロマ講座のご案内
お友達と一緒に何かを学びたい、仲間でわいわいクラフ
ト作りをしたいなど、ご希望に合わせて、折立先生が出張
アロマ講座を開催してくれます。
詳細は http://tiroiraroma.blog.fc2.com/
お問合せは tiroiraroma@gmail.com

「あかり」がつくる
やさしい気持ち

Buon Grande ARIA(大阪市中央区北浜) http://www.buongrande.com/aria

ろうそくの灯りに心癒されたことのある人は多いだろう。ろうそくのゆらぎが、人をリラックスさせる「1/fゆらぎ」と言われる自然界のリズムを刻んでいるからだと言われている。それに加え、キャンドルの炎が放つあたたかな色味がそうさせるのだろう。写真は、大阪・北浜にあるイタリアンレストランのテラス席。中之島の灯りと呼応するように、優しいあかりを灯しているスタンドライトが印象的だ。これをコーディネートしたのが、ライティングデザイナーの中井川さん。彼女もこの作品は気に入っているのだそう。

「先方から、キャンドルを使いたいという依頼がありました。でも、キャンドルだけでは料理がおいしそうに見えないし、食事をするには手元が少し暗い。そこで、センターにキャンドル、フードの底部分に電球を据えました。また、吹きガラスでフードを作ることで、キャンドルのゆらぎに加え、その風合いが光を優しく拡散してくれます。心落ち着くと思いませんか?照明は面白いです。あかり一つで人をやさしい気持ちにさせてくれたりしますからね」。そこで、住宅でも応用できるくつろぎの「あかり」づくりについて、中井川さんに伺った。

 

MAXRAY INC.
シニア ライティング デザイナー

中井川 知子さん


「あかり」が持つ、人の心を動かす力に魅了され、ライティングデザイナーに。全国に表情豊かな空間を続々と創り出している。

 

Point.1
温もりのある光選び「色温度」

蛍光灯や白熱球、LEDなど家を灯す光源もさまざまだ。消費電力(W)や明るさ(lm)など、選ぶポイントも色々あるが、くつろぎのあかりづくりにとって大切なのは、色温度。K(ケルビン)という単位で表記され、その違いは色味に現れる。数値が高いと青白い爽やかな光、低いと赤い温かな光。一般には「電球色」と表記される2800K辺りがおすすめだ。

Point.2
優しい光選び「グレア」

「まぶしい」と感じると居心地が悪く、見えづらい。これを「グレア」と言う。それは光の強さ以外に周囲と光源との光のバランスや、直接光か間接光か、また光の射す角度に起因する。くつろぎの空間をつくるのに最適な、優しい光の作り方を知ろう。

額や植栽の後ろ、カーテンボックスの上などに照明を置くだけで、簡単に間接照明はつくれる。色々な光の角度で試してみよう。

施工前なら、埋め込みの間接照明を盛り込む ことができる。空間の使用用途を伝えて、設計 担当者やデザイナーに相談してみよう。

まぶしい光(左)も、布や紙で覆うだけで、優しい光(右)に変えるこ とができる。また逆にグレアを利用し、ガラスなど光を屈折させる素 材を使ってキラキラした光を作ることもできる。

Point.3
安心感のある光選び「位置と広がり」

同じ明るさ・色温度の光源でも、置く位置によって光の広がりが異なる。広がれば全体が明るく、狭ければひっそりとした印象。光がつくる安心感は、自分の居心地のいい広さを照らしてくれることに大きく関係する。安心感のある光の広がりを見つけよう。

光の置かれる高さが低ければ低いほど(左)、空間が狭く感じられ、ひっそりとした印象。逆に、高ければ広く照らされるので空間が広く感じられる。いずれにしても、照明器具の明るさや色温度、フードの形状、素材にもよるので、それも合わせて検討しよう。

壁際、とくに部屋の角に照明を置いた場合(左)、壁の反射が1クッションになり、優しい光が部屋全体に広がる。中央におくと(右)、光は全体に行き渡るが、間接照明的な優しさは得にくい。