巻頭特集

いい家は家事が楽しい

 「家事を仕事として年収に換算すると」という話をよく聞く。1600万円を越えるという話の一方で200万円以下だという話も。いずれも、プロに任せた場合の試算なのだが、これだけ差が出るのは、家事という仕事は質に差が生まれやすいから。一方は、ちょっとしたレストランレベルの料理に、一流ホテル並みの快適な空間維持を前提に試算した場合。片や…言うまでもない。つまり家事は、料理や空間づくりなど、個人の能力によるところが大きいクリエイティブな要素を持った仕事だということだ。だとしたら、自分の発想ひとつでいかようにも楽しめ、進化させることができるのではないだろうか。
 そこで今回は、実際に自分の創造力を活かし、自分流の家事を見出している家事クリエイターたちと、その仕事場である「家」を紹介しようと思う。

お気に入りを丁寧に使いこなせば
家事は豊かになる
家事クリエーター 豊中市 雑貨屋「soraji」 店主 村上 涼子さん

対面式キッチンでありながら、白いフレームで雑多な手元が隠れるように設計されている村上邸。雑貨店のオーナーであり、バイヤーでもある奥様の洗練された感覚が光るシンプルかつ温もりのある空間となっている。

白い外壁にステンドグラスをあしらった木の扉がかわいい村上邸の外観。店先でもあるご自宅の外回りをほうきとちりとりで掃除する村上さん。

家事をスタイリングで楽しむ

 「家事は好きですか」と尋ねると、「特にご飯づくりが。食器とのスタイリングを考えるのが好きです」と答えてくれたのは、手作りとアンティーク雑貨の店「soraji」の店主、村上さん。3人の子どもをもつママさんオーナーだ。感心させられるのは、日々の食卓に「スタイリング」という感覚を持っていること。そこで、無理を言って実際に食卓を再現してもらった。献立は洋風おでんと有機野菜のサラダに天然酵母のパン。すると、シンプルな中に食材の色が映える温かな食卓ができあがった。

サラダの器はお気に入りの作家の作品。陶器のような光沢を持つ深い茶の取り皿は木製で軽く、とても使い勝手がいいのだそう。洋風おでんは、火にかけた後毛布にくるんで余熱調理。味の染み込みがよくなる上に、省エネにもなるおすすめの調理法だ。野菜は地元の新鮮なものを、パンは天然酵母をのものをと、食べ物選びも大切にしている。

 「このお皿、陶器に見えるけど、実は木なんです。軽くて割れないし、水でじゃぶじゃぶ洗えて便利なんですよ。こっちの器はお気に入りの作家さんのもので…」。聞くと、皿から鍋、野菜、パンにいたるまで、全てに思い入れがあり、なんとなく使っているものは何一つない。「モノはちゃんと吟味して、理由を持って買うように心掛けています。そうすることで、大切にすることができ、愛情が沸いて、楽しく使いこなせるようになるんです。それに、間に合わせでモノを増やすと面倒が増えます。できるだけミニマムに、本当に気に入ったモノと丁寧に付き合う。例えば、鍋はこの3つだけ。無駄にあっても眠らせるか、シンクに洗い物がたまるかでしょ。

ミニマムが丁寧で豊かな暮らしを生む

 掃除機もありません。フローリングだけだから、フロアモップで十分。外はほうきとちりとりで。結局その方が簡単なんです。重い掃除機を運んで、足下をコードに邪魔されながら掃除するより」。確かに、改めて部屋を見渡すと、家具も飾り物も少なく、雑多になりがちなキッチンにもほとんどモノがない。しかし寂しい感じもなく、生活感があり温もりを感じる。「それは、アンティーク家具や絵、キッチン戸棚の無垢の木の素材感などのお陰です。それらの温かな表情を引き立たせるためにベースを白い空間にしています」。使い込まれた風合いが味わい深いダイニングテーブル、個性豊かなイスたち、洋の空間にちょこんと溶け込む和箪笥、木目が大胆に浮き出たキッチンキャビネット。この部屋にいると、村上さんの丁寧で豊かな営みがじんわりと伝わってきて、のんびりと温かな気持ちになれる。

掃除はペーパーモップ、外はほうきとちりとりで。掃除機は卒業したのだそう。

鍋釜類はスタッキングできる3サイズの鍋とフライパンのみ。

お気に入りのキッチンツールはシンプルで機能的なものばかり。

南向きの窓からロールスクリーンを通して優しい光が差し込むリビング。表情豊かなアンティーク家具たちとご夫婦の人柄で、のんびりと温かな空気に包まれている。



Information

村上 涼子さん
雑貨屋『soraji』の店主。店主セレクトの個性豊かな手作りやアンティークが並ぶ。三児と1匹の母。


soraji
豊中市西緑丘2-4-16
TEL.06-6850-7207
火・金曜のみ営業10~16時
http://www.geocities.jp/soraji_2004/