つちかわれる、モノ・暮らし

「DIY CARPET WOOLTILE」

 

堀田カーペット株式会社

心地よい暮らしを気軽に取り入れられる
広さもデザインも自由自在なDIYカーペット

日々の暮らしを共にする道具や器、家具などのインテリア。モノにあふれている時代だからこそ、暮らしに寄り添う丁寧につくられたモノを選びたい。今回は世界で唯一の技術を用いたウールタイルカーペットを製造する堀田カーペットへ。フローリング文化が根づいた日本に一石を投じるデザイン性と機能性を兼ね備えた新しいカーペットへの熱い思いと、その背景にある日本のカーペットの文化に迫った。

撮影/東郷憲志 取材・文/西川有紀

 日本の敷物の歴史は古く、毛羽のある敷物がつくられるようになったのは江戸時代。その製法は1688年に中国から現在の佐賀県鍋島地域へ伝えられたのがはじまりとされる。その後、兵庫県赤穂市、大阪府堺市、山形県の各地に広がり、現在、商業用のカーペット製品としてその技術を受け継ぐのが堺と山形だ。中でも堺は幕末の天保年間より手織り緞通(だんつう)の産地として栄え、日本国内のみならず欧米でも住空間を彩った歴史が残っている。
 1889年には、欧米のインテリア敷物を収集していた高島屋4代の飯田新七氏が、イギリスの産業革命時に生み出された機械織りカーペットを製造するウィルトン織機の試織を現在の大阪市住吉区にあった村田工場に依頼。それを機に、南大阪を中心としたカーペットの手織業者でウィルトン織機を用いた機械生産をはじめる者が相次いだ。今も国産機械織りカーペットの技術を受け継ぐ会社が南大阪に残っているのはそのためだ。

ワインダーの工程は2010年頃まで近所のおばあちゃんの内職に頼っていたが、高齢化と共に自社で担わざるを得なくなったという。

束から駒の状態になったウール糸。

写駒は人の手で一つひとつ機械に設置するため、織るまでにも大変な時間を有する。

ウィルトン織機と
共に歩む堀田カーペット

 大阪府和泉市にある堀田カーペットは、ウィルトン織機を用いた日本に数少ないウールカーペットのファクトリー。高い技術と品質を持つことから、ラグジュアリーブランドや高級ホテルに敷き込まれる特注ロールカーペットを受注することも多いが、創業は1962年と意外と若い。現社長の祖父である初代・堀田繁清さんが、この地域で盛んに使われていたウィルトン織機を少しずつ譲り受け、地場産業とも言えるこの仕事をあらためて立ち上げたのだ。1991年に2代目・堀田繁光さんに代わり、ウールカーペットのオリジナルブランドを立ち上げ、独自の高い技術力がカーペット業界に知られるきっかけとなった。2017年には3代目の現社長・堀田将矢さんに引き継がれ、今の時代に寄り添うものづくりで、新しいカーペット文化の発展に挑戦している。
 3代にわたり、技術を受け継いできた堀田カーペットだが、国内カーペット産業は大変厳しい状況にある。「1980年代は住宅の床の 20 %は敷き込みカーペットが用いられていましたが、今ではその百分の一である、0.2%まで激減。最盛期には全国で400台近く稼働していたウィルトン織機も、20台程度まで減少しました。その内の9台は堀田カーペットで稼働しています。メーカーも数社しかありません」と社長の堀田さんは話す。
 また、ウィルトン織機減少の背景には1950年代にアメリカで開発されたカーペットを大量生産できる機械、タフテッド機の影響も大きい。大量生産により単価も下がり、一般的に流通しているカーペットはほとんどがタフテッド機でつくられた製品となった。ウィルトン織機で織られたウールカーペットの存在は極めて貴重になっているのだ。

50~60年前につくられた日本製のウィルトン織機を使用。

完成したロールカーペットは工場2Fへ運び丁寧に検品する。

社長の堀田将矢さん。

緯糸には程よく伸びて縮むジュート糸を採用。

柄の表現はジャカードと呼ばれる柄出し装置で制御している。

家族団らんの空間に
カーペット文化を再び

 堀田カーペットの工場からは、毎日ウィルトン織機の元気な音が聞こえてくる。社長の堀田さんが大阪と和歌山の工場内を案内してくれた。大阪の工場ではウールのロールカーペットを製造。その工程は創業以来、ほとんど変わっていないという。原材料となるウールの糸は紡績屋に依頼し、指定する色に染め、束の状態で納品される。カーペットづくりはこの糸を工場内で駒に巻きつけるワインダーという工程からはじまる。ウールの糸は堀田カーペットの強みの一つで、自社オリジナルの上質な糸を30種類以上展開。商品のデザインや求められている機能に合わせて、糸を選び、織り方を工夫することで、唯一無二の特注ロールカーペットをつくり上げる。
 経糸となる駒が巻き上がるとウィルトン織機に設置していく。1色のカーペットを織るのに必要な駒は1200本。最大5色使うことができ、その場合6000本の駒が必要になる。次はいよいよ織の工程へ。幅8m、長さ20mほどある巨大なウィルトン織機に6000本の糸が吸い込まれていく姿は圧巻。緯糸も合わせると1万〜1万5000本の糸が織られていく。「こんなに大きなウィルトン織機ですが、モーターはたった一つ。歯車の組み合わせで動いているんです。織工と呼ばれる職人が1台に対して必ず1人必要で、織工は目で糸を確認し、耳で正常に歯車が噛み合っているか音を聞き分けながら製織していきます。ベテランの織工が動かしている機械の音は静かなのですぐに分かりますね。自分の手足のように織機を動かせるのが職人の腕の見せ所。一人前の織工になるには10 年ほどの年月がかかります」と堀田さん。
 ウィルトン織機は左から右、右から左へシャトル(緯糸)が飛んで織れるのは約3mm。1日10〜15mしか織ることができない。大量産型のタフテッド機であれば1日1000m製造できるものもあるというのでその差は歴然。それでも堀田社長がウィルトン織機にこだわり続けるのにはウールカーペットの正しい機能を伝え、文化として再び暮らしに取り入れて欲しいという思いがあるからだ。「ホテルや商業施設などカーペットの市場が広がっている部分はありますが、文化として残すためには住宅における敷き込みカーペットの割合を増やすことが必須だと考えています。0.2%は文化ではないんですよね。でも0.2%から1〜5%にはできると思っていて、ウールカーペットの優れた機能性と心地よい質感を伝えていけたら、文化として残していけると可能性を感じています。私の家は全面カーペットにしているんですが、どこでも寝転べる床に住む日本人らしい暮らしは本当に快適です。汚れを気にする方も多いですが、ウールは水を弾く性質をもっているので冷たい液体は染み込まないですし、コーヒーなどをこぼしてもすぐにお湯を染み込ませて拭き取れば綺麗にとれます。日本でつくられているウール素材は防虫加工剤が必ず施されているので、掃除機をかけていればダニも住み着きにくくなります。調湿効果にも優れているので、夏場でも快適に過ごせるんです。床全面をカーペットにして欲しいとは全く思っていなくて、リビングなど家族で団らんする空間に最適な床材だということを伝えていきたいんです。」

完成したロールカーペットは工場横の倉庫へ。

「WOOLTILE」を製造する和歌山工場。

「WOOLTILE」は機械で基盤に樹脂を塗る基盤づくりからスタート。

完成した基盤を50cm×50cmにカット。

基盤からはみ出した樹脂をカットする。

カーペットがある暮らしを
〝DIY〞でもっと気軽に

 堀田さんが社長に就任し最初に改革したのは見せ方の部分だ。2017年に堀田カーペットのリブランディングを手掛け、デザイナーやカメラマンとタッグを組みホームページ(以下HP)やロゴを刷新。2018年には事務所を改装した。「今でも父親には発想やものづくりの部分では勝てないと思っているので、私の役割は親父がやってきたことを第三者に正しく伝えていくことだと考えています。HPでファクトリーとしての魅力を伝え、それを見て工場へ足を運びたいと思ってくれると人が増えると思ったので事務所の改装を手掛けたんです」。
 堀田さんのリブランディングは成功し、今では年間300人が工場見学に訪れるという。新しい商品ブランドも立ち上げた。2019年9月に誕生したばかりのDIYカーペット「WOOLTILE」だ。

大阪工場でウィルトン織機を扱っていたベテランの職人がア キスタイルを動かす

アキスタイルにセットする糸は駒ごとに巻く糸の長さを調整して細かな柄を表現する。

アキスタイルはボンデットという製法で、糸をカットし基盤に植え付けていく。

50cm角で1枚ずつつくる。柄をつなげることも可能だ。

基盤への植え込みが完了したら熱を加えて糸を固定。 17.50cm角で1枚ずつつくる。柄をつなげることも可能だ。

4辺にシャーリングの加工を施し完成。「WOOLTILE」はロールカーペット以上に手間と時間がかかるため1日15平米しかつくることができない。

 「カーペットを買うタイミングは長い人生の中でもおそらく5回程度でしょう。だから、もっとカーペットを気軽に楽しんでもらえる商品を作りたいと考え、DIYという切り口とタイルカーペットの手軽さを融合したブランドを立ち上げました」と堀田さん。和歌山の工場で製造している「WOOLTILE」はロールカーペットと製法が全く異なる。使用するのは2018年に導入した世界で唯一、堀田カーペットが所有するアキスタイルという機械。アキスタイルは織絨毯のグレード感を限りなく追求した新次元のデザインタイルカーペットを製造できる。最大 11 色の糸が使用できるのでデザイン表現の幅が広く、複雑な柄を表現しても柄ずれなく組み合わせることが可能。「並べて置くだけでラグになり、カットも簡単にできるので床一面を敷き詰めるときでも難しい工具は不要です。WOOLTILEを通して、ウールカーペットの心地良さを感じていただけたらうれしい」と堀田さんは語る。家庭やオフィス、店舗やキッズスペースなど、発想に応じて様々なシーンで活用できる「WOOLTILE」。好きな色柄を並べるだけで自分だけの空間をつくることができる手軽さはカーペットがある暮らしの入り口にぴったりだ。堀田さんが描くカーペットの文化が再び根付く未来もそう遠くないかもしれない。

色と柄の組み合わせが楽しい「WOOLTILE」。サイズ:1枚W500×H500mm/素材:ニュージーランド産ウール/価格:1枚4,500円(税別)

置くだけなので子どもと一緒に敷くのもおすすめ。

カッターナイフと定規があれば簡単にカットできる。

12mmの厚みが心 地よいふわふわ感を演出。

専用ボックス入りの全8色がセットになった10cm角のミニサンプルは取り寄せ可能/価格:2,000円(税別)

WOOLTILEはWEB上で色や柄を選びながらシミュレーションができる。敷きたい面積の設定も可能。

取材協力:堀田カーペット株式会社
TEL.0725-43-6464
大阪府和泉市観音寺町531
URL/https://hdc.co.jp