The Study

History

日本における庭の起源は、認識や定義によっても異なるが、広い意味では祭祀や儀式が行われた広場だと考えられている。それらは概ね、中心に池が配置され、勾配をつけた築山、そして様々に組み合わされた石で形成されていた。

 諸説あるが、庭園文化が芽生えたのは飛鳥時 代、百済から庭園づくりの技術が渡来してからのことだ。710年(奈良時代)には、平城京の創建に伴い、大きな庭園がつくられた。自然をモチーフに、池や川、滝などを再現し、石を自然の形のまま配置していたそうだ。平安時代に入ると、庭園文化はさらに開花し、貴族の間で、自然の山々を借景に、大きな池をもつ広く優雅な庭づくりが流行った。それらは主に、客をもてなす場所であり、池に船を浮かべて社交の 場としていたようだ。10円玉に描かれている宇治・平等院鳳凰堂の庭園などがそれに当たる。
 鎌倉~室町時代には大きな変化を遂げる。武士の台頭と禅思想の広がりにより、瞑想や修行の場となった庭は、静かでプライベートな空間へと変貌する。瀧安寺の庭園に代表される、石や砂で水の流れを表現した枯山水という形式が生まれたのもこの頃だ。また、安土桃山時代には千利休が確立した侘茶の文化と共に、狭い中に野山を表現した、茶室への通路となる茶庭(露地)が注目される。利休は露地を「浮世の外ノ道」と呼び、茶室を世俗から断ち、そこへ向かう人々を聖化するための道として捉えていたようだ。
 いずれの時代も、自然への憧れや敬仰があったことと、眺めたり感じたりすることで心に作用 する力を、庭に求めていたようだ。

参考:Webサイト「ワゴコロ」https://wa-gokoro.jp 株式会社ヒトノテ

庭の役割と
広がる可能性

 近年、庭が単に眺めるものでは なく、住空間の一部として役割を担っていることは、広く認識されている。しかしながら、家を建てる際に、庭のデザインを意識している人がどれほどいるだろう。広大な土地があり、広い庭が想定されれば、意識するだろうが、都市部の一般的な区画の場合、建物以外は、ガレージ、ベランダ、門からのアプローチなど、いわゆる外構だけで、そこに『庭』という発想は生まれにくい。
 しかし、人はDNAレベルで緑を欲するようで、どんなにアウトドアが苦手な人でも、その外構の隙間に、緑を植えようとする。そこでおすすめしたいのは、どんなに狭くても、建築段階から外構を『庭』として意識するということ。
 今回、さまざまなガーデナーや造園業者を取材する中で全員が共通して言ったことは、「どんなに狭くても、建築段階から相談してくれれば、もっと有効な使い方が提案できる」ということ。隣家との接点、ガレージ、門からのアプローチ、ベランダ、それらひとつひとつのやりようで、緑で暮らしを潤すことができるというのだ。
 今回は、インテリアを考えるように、庭のデザインについて考えてみようと思う。

庭をデザインするということ

 前段の「どんなに狭くても、建築段階から相談してくれれば、もっと有効な使い方が提案できる」という話は、建ててしまってからではどうしようもない要素があるからだ。まずは、庭をデザインする上で意識しなければならない要素を知ることから始めよう。

目的別 庭の実例

今や住空間の一部としての機能を担っている庭。
その目的別に具体的な施工事例から学んでみよう。

Ⅰリビングガーデン

 「リビングガーデン」「アウトドアリビング」とは、その名の通り、お茶を飲みながらくつろいだり、家族や友人とおしゃべりを楽しんだりするスペースのある庭のこと。近年は、屋内の床と同じ高さにデッキを設え、室内から伸びる空間づくりが人気のようだ。この方法なら、広がりが感じられるので、比較的狭い庭を有効に使うことができる。また、外は感じたいが、温度は快適に保ちたい方には、透過性のある天井や壁で囲われたサンルームもおすすめだ。

門からのアプローチ。奥にあるウッドデッキの スペースは、手前からはほとんど見えない。

パーゴラ
ナチュラルガーデンに包まれたリビング(宝塚ガーデンアブリール)
室内と門、両方からのアプローチで繋がっているウッドデッキのある庭。大きめのテーブルと4脚の椅子、ベンチもあるので、来客の際は玄関を介せず直接ここに招くそう。パーゴラにターフをかけたり、蔓ものの植物を這わせるな どして遮光できる。ウッドフェンスで遮蔽しているほか、道路側(門扉側)からは、植物が目隠しになっている。


壁を一部開き、ウッドフェンスの前に植栽することで、より自然を感じることができる。

リビングから連続するデッキ
植物が植えられないデッキに 4メートルの木を配置(IRODORIMIDORI)
屋内外に同じタイルを使用することで連続性を出し、空間に広がりを生み出しているデッキ。シャープなスペースに、プランターを使って大きな落葉樹やハーブなどを配置することで、四季が感じられる温もりあるアウトドアリビング になっている。


庭小屋
風や緑を楽しむ小屋(フィトライフ)
ナチュラルガーデンに、風や緑が感じられるオープンな小屋を配置した庭。小屋にはシンクや収納庫もあり機能的である一方、フレンチシックな佇まいは、庭の演出にも一役買っており、さしずめ『南仏の森に佇む小さなお家』といった雰囲気だ。

Ⅱ子どもと楽しむ庭

 小さな子どものいる家庭にとって、庭は、最も安全な屋外の遊び場。砂場やブランコ、食育用の小さな菜園を備えつけたり、プレイジムやプールを広げる場所としても活躍する。
 また、忙しく時間の取れない家庭にとって、キャンプ気分の味わえるBBQは気軽にできる家族イベント。室内から連続するウッドデッキなら、キッチンからの動線もスムーズなので、とても便利だ。

ファンタジーを楽しむ
ALICE SHADE(フィトライフ)
60代のご夫婦がお孫さんのために「不思議の国のアリス」をテーマに作った庭。子どもしか通れない小さな扉から入って穴を抜けると、ナチュラルガーデンに包まれたワンダーランドへ迷い込む仕掛け。庭小屋にも小さな扉がたくさんあり、うさぎが覗いていたり、アリスのステンドグラスがはめられていたり。部屋の中には備え付けの机があり、お孫さんが絵を描くなどして遊べる空間になっている。


ウッドフェンスに守られた プレイパーク(フィトライフ)
緑化協定により道路添いの庭をオープンにしなければならないため、デッキにウッドフェンスを設置。日よけのある広いウッドデッキならビニールプールを広げて子ども達を安心して遊ばせることができ、また、土や芝の汚れもつかないので、始末もとても簡単だ。


プールや遊具を楽しむ
水槽のあるBBQデッキ(宝塚ガーデンアブリール)
水棲生物好きのお子様がザリガニやメダカを放すことができる水槽付きのウッドデッキ。水草などを浮かべて観賞にも一役買っている。デッキではBBQはもちろん、ここで食べれば日常の食事が特別な時間になる。


バーベキューを楽しむ
ピザ釜のあるBBQデッキ(宝塚ガーデンアブリール)
キャンプ好きのご家族が、友人を招いてピザでおもてなしできるようにと作った20㎡の広いウッドデッキ。デッキもフェンスも天然木にこだわり、よりナチュラルな空間となっている。屋根もあるので、雨天でも楽しめる。


Ⅲ大人が楽しむ

 「子どもたちが独立したので、自分たちの趣味が楽しめる庭にリフォームしたい」というニーズは多いそうだ。その内容は、手間をかけずに園芸を楽しみたい、納屋を趣味の工房に作り変えたい、仲間とゆっくりお茶を飲むスペースが欲しいなど、さまざま。庭が整えられて以降、家の中より庭で過ごす時間の方が長いという人も少なくない。

無理なく草木の手入れができる
広い園路で雑草をブロックした庭(宝塚ガーデンアブリール)
土いじりは好きだが、草むしりはできるだけ減らしたいというご夫婦の庭。中央の花壇を囲むように、コンクリートとレンガで園路をつくることで雑草 をブロックアウト。また、回遊できるので全てに手が届きやすくなり、手入れもしやすくまた、手の届かない場所には防草シートが使用されている。広いデッキで休憩しながら庭を鑑賞し、気が向いたら手入れをするそう。


シンプルでカントリー調のテイストがかっこいい庭小屋の外観。大きな庇のあるスペースは自転車を置くスペース。

庭小屋を趣味の部屋に
農小屋を大人の秘密基地にした庭(フィトライフ)
アメリカンアンティーク好きのご主人が、自分の時間を謳歌するため、古い農小屋をリフォーム。テイストを合わせてリフォームされたウッドデッキは、雨よけの大きな屋根を設え、洗濯を干すスペースにするなど機 能にも配慮しつつ、ウッドフェンスで遮蔽したり、デッキ上に植栽するなど、世界観が維持されている。


TOPIC

雑草を 撃退する方法
庭を持つ上で回避できな手入れ。特に面倒なのが草むしりだ。業者に入ってもらうという手もあるが、夏などは続々と生えてくるので間に合わない。ならば、雑草が生えない方法を考えてみてはどうだろう。

①下草をたくさん植える
下草を詰めて植えれば、日が当たらず、種も落ちにくいので雑草は生えにくくなる。ナチュラルガーデン風に仕上げれば、見た目もおしゃれ。

宝塚ガーデンアブリール

②舗装材で固める
舗装材で固めれば雑草は生えないが、無機質な印象になりかねない。庭の温もりが失われないよう、デザインしよう。

京阪園芸モデルガーデン

宝塚ガーデンアブリール

③防草シートを敷く
土の上に敷いて光を遮ることで、植物の発育を抑えるシート。上から、チップや砂利などで隠してしまえば見た目も問題ない。

Ⅳキッチンガーデン

 昔からあった家庭菜園だが、昨今は目的が多様化している。収穫を楽しむだけでなく、花や葉を愛でて楽しんだり、子どもの食育として実践したり、「ポタジェ」のようにデザインを楽しんだり、さまざまだ。また、野菜だけでなく、オリーブやレモンなどの果樹をシンボルツリーとして植える庭も増えている。野菜の栽培はプランターひとつから始められるが、土作りや手入れに細かいノウハウが必要なものも多い。

見た目も美しい菜園
レンガの園路で仕切られた菜園(フィトライフ)
レンガの園路と農機具用の庭小屋が可愛い菜園の庭。園路が広く縦横に行き渡っているので、足場を気にせず野菜の手入れができる。庭小屋の横には、野菜の根洗いや、手を洗うためのシンクが備え付けられている。


手軽なミニ菜園
ウッドデッキ上のプチ菜園(フィトライフ)
リビングから続くウッドデッキに小さな植栽スペースを設けることで、気軽に手入れできるプチ菜園を実現。ハーブなど食卓を彩るちょっとした植物を楽しむことがでる。ウッドデッキで床をあげることで、リビングに広がりが生まれ、遮蔽も圧迫感なく叶えられている。


高さで手入れを楽にしたミニ菜園(株式会社フィトライフ)
従来の庭木を生かしたリノベーションの庭。腰をかがめず楽に手入れができるよう高さを出した菜園と、採れた作物の土落としなどの処理ができるシンクが設置されている。レンガなどで小道を整備したり、パーゴラを設置するなど庭を楽しむ要素が盛りだくさんに詰まった庭だ。


TOPIC

見た目も楽しむ家庭菜園『ポタジェ』

『ポタジェ』とは、フランス語で「家庭菜園」のこと。しかし日本では少し特別な意味を持っており、さまざまな野菜や花、果樹などを織り交ぜ、寄せ植えのように美しく仕立てられた菜園のことを指す。寄せ植えやナチュラルガーデンをデザインするのと同様に、植物の高低差や、葉・花・実の色や形を考えながら植え付けていく。
ただし、植物間には相性があり、組み合わせが悪いと、作物の成長に影響するので、単にビジュアルだけで組み合わせるわけではない。また、同じ場所に同じ野菜を植え続けると、土の栄養が偏り、実りが悪くなるので注意が必要だ。初心者はまず、トマトやナスなどの育てやすい野菜から始めると良い。プランターでも十分に楽しめるのも嬉しい。

TOPIC

IRODORIMIDORI 松江 大輔さんの庭づくり

お客様のイメージに
1~2%上乗せして
感動のある庭をつくる

「IRODORIMIDORI」の松江大輔さんが作る庭はお客様にまっすぐで、おしゃれで、かっこいい。今回は、実際に彼が手がけた庭について、施主の降幡さんに参加いただいて、話を聞いた。

降幡さん(左)と松江さん(右)が会うのはわずか4回目。しかし、感度の高いもの同士、息が合う様子。

Q 松江さんに庭のデザインを 依頼したのはなぜ?

降幡
※ 敬称略
「私は、アパレルやインテリア関連の仕事をしていることもあり、空間デザインにはこだわりがあったので、自分の家を建てるに当たっては、はっきりとしたイメージがありました。だから、住宅メーカーさんと綿密に打合せをして、建物は満足できるものができたのですが、庭については、なかなか納得のいく提案がいただけませんでした。
家に緑は不可欠だと思っていたし、緑を使ったかっこいい空間も知っていたので、妥協できなかったんです。そこで、信頼できるプロを探して頼もうと思ったのが松江さんとのご縁の始まりです」。

松江
「家を建てるに当たって、庭はついで扱いされることが多いんです。植え込みの枠だけ作っておいて、後から〝 何か適当に植えておいて〞って、ステーキのパセリ扱い。僕は、サラダプレートを作りたいし、造園業をもっとかっこよくしたいし、できると思っています」。


Q どんな庭をオファーを されたのでしょう?

降幡
「具体的にオファーした記憶はありません。松江さんを面白い人だと思ってからは、彼からの提案に相槌を打っていただけです」。

松江
「僕は、普段から施主様に質疑応答はしません。みなさん、庭に対するイメージはぼんやりしたものなので、具体的に聞くのではなく、趣味や好きなものの話など、日常会話の中で、その人がどんな空間を求めているのかを見極め、そこにプロとして1〜2%上乗せして形にしていきます」。



Q では、どんな会話から この庭が生まれたのでしょう?

松江
「ご依頼いただいた時点で、建物はかなりできているとのことだったので、慌てて駆けつけて、現場を散策しながら立ち話をしました」。

降幡
月の半分くらい、東京や海外に出張してて…なんて話をしたような気がします」。

松江
「はい。会社を経営されているというお話や、堀江からこちら(箕面)へ越してくるという話から、とても忙しくて、日々張り詰めて仕事をされているから、仕事のオンとオフを提案できればいいなと思いました。だから 〝帰ってきたら門構えの木をくぐって家へ入れたら良くないですか?そこでいい香りがしたらもっと良くないですか?〞などと、オンオフを切り替えるストーリーをお話をしました。設計上、植え込みの枠は、玄関前のアプローチとその奥しかなかったので」。

降幡
「そうしたら、このテラスを見て〝ここに木、欲しくないですか?〞って。しかも、巨木を入れるって言うんですよ。想像もしていませんでしたが、確かにあったらいいなぁと思ったのでその場でOKしました」。

松江
「テラスで、自然体でリラックスしていただくためには、四季を感じてもらえるシンボルとなる大きな落葉樹しかないと思い、提案させていただきました。春には芽吹いて、夏には木陰ができ、秋には色づき、冬には落葉する季節の移ろいが感じられる1本。だから、僕はここにしばらくぼーっと立って頭の中にある木のストックと照らし合わせながらイメージしました。この、壁を背にしっくりくる樹形の落葉樹を」。

降幡
「枝の形も計算に入っていたんですね。初めて聞きました」。

松江
「このテラスは、この家の中心にあって、どの部屋からも見えるんです。リビングからもキッチンからも2階の寝室からも。
図面上は、ここに植栽する予定はありませんでしたが、ここに説得力のある1本を置かないわけにはいかないと思い、このもみじを置きました」。


Q 実際に暮らし始めて、 いかがですか?

降幡
「暮らし始めてと言う訳ではありませんが、松江さんに出会ってから、植物に興味がわきました。山や海外でかっこいい植物を見つけたら、これ何だろうと探ったり」。

松江
「カリフォルニアの話をよくお聞きしていたので、どこまでワイルドに攻めようかと考えたこともありましたね」。

降幡
「玄関前の植え込みは、ワイルドさが出ていますよね。赤土っぽい感じも」。

松江
「随所にオーストラリアの植物を使っていますが、やはり核は飽きのこないもみじですよ。言い換えればメープルですから、和風でもないですしね」。

降幡
「ええ。暮らし始めてからまだ2週間ですが、もみじの今にも芽吹きそうな膨らみを眺めて楽しみにしています」。


松江
「実施に芽吹いたら、感動して恋しますよ。4月くらいには、青々としたもみじの葉がこの空間を覆い尽くして、涼やかな木陰ができますし」。

降幡
「ワクワクしますね」。

松江
「はい。その感動のために、この4 m 250 Kg の巨木と、直径1.2 mのプランターを無理やり入れたんです」。

玄関へのアプローチ。グミの木が育てば立派なアーチとなり、帰宅した降幡さんを迎えてくれる。

初夏の緑豊かなもみじ。

中央には、BBQもできる焚火台が。もみじの他にも、ローズマリーやレモンバーベナなど、香り豊かで調理やお茶に使える植物も。


取材・写真協力(五十音順)

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