The Study

床 – 1

History

 日本最古の住宅と言えば、早期縄文時代 から見られるようになった竪穴住居。この頃、 人は土間で暮らしており、いわゆる床は見ら れない。しかし、一部に板を敷いた痕跡があり、 それを床とするなら、それが起源と言える。  本格的に板の間が登場するのは、農作物 の貯蔵庫として建てられた高床倉庫以降だ。 当初は蔵としてのみ使用されていたが、貴族 が生まれると住居として、また、寺院にも使 われるようになった。
 一方、6世紀頃に仏教と共に渡ってきた 寺院建築では、磚(せん)と呼ばれるタイル のような焼き物が床に使用されていた。しか し、履物を脱いで上がる床ではなかったよう だ。この頃、庶民・農民は、まだ、土間にむし ろを敷いて寝起きしている。
 現在の床に近いものが現れたのは、平安 時代、商家が建てられるようになってから。現 在でも見られる町屋同様に、半分が土間で、 火や水を使う場所。半分が1段上がった板 の間で商売または居住する場所。この頃から 日本人の、履物を脱いで一段上がる暮らしが 始まったようだ。  それ以降、徐々に農民の間でも一段上が る暮らしは広がっていくが、一般的になるの は江戸時代に入ってから。この頃には、畳も 広く普及していた。
 明治に入ると西洋建築の影響を受けた 木の床が使われるようになったが、畳と併用 されたため、靴を脱ぐ文化は残ったそうだ。

出典:「Essence of Live Natural」朝日ウッドテック株式会社

空間づくりは床から

 「ご自宅の床について説明して ください」と言われて語れる人が どれくらいいるだろうか。住空間 の構成要素として大きな割合を 占め、家の中で最も肌に触れる 時間が長い床。しかしながら、注 目度は少々低いように思われる。
 それに反して、実際に家を建て る場合、床材選びはとても重要。 インテリアにおいても、機能面に おいても、空間に及ぼす影響力が 絶大だからだ。  ではまず、床材にはどんなもの があるか考えてみよう。
 真っ先に思いつくのは木質の 床材だ。一般的にはフローリング と呼ばれていて、大きくは「無垢
フローリング」と「複合フローリ ング」に分けられる。
 次に思い浮かぶのは「タイル」 だろうか。一言でタイルと言って も、陶磁器製もあれば、大理石な どの石、ガラス、樹脂(主に塩ビ) 製のPタイルもある。  樹脂製で言えば、クッションフ ロアも優秀な床材だ。
 そして、最近、人気を高めつつ あるカーペットやタイルカーペッ ト、畳などの敷物も床材とする と、その領域は意外に広い。
 そこで、今回のテーマ「床」につ いては、2回に分けてご紹介しよ うと思う。第1回目は、フローリ ングについてまとめてみた。

フローリング(木質の床材)

フローリングにはさまざまな要素があり、 その掛け算によってかなり多くの選択肢がある。
今回は、①無垢フローリングと複合フローリング ②樹種 ③組み方 ④表面加工 の4つに分けて整理してみた。

1 無垢フローリング or 複合フローリング

フローリングはまず、無垢フローリング(単層フローリング)と複合フローリングに大別される。

無垢フローリングとは・・・原木を製材し、フローリング材として切り分けたもの。
複合フローリングとは・・・土台となる基材の表面に天然木の突板(0.3㎜程度)または挽板(2㎜程度)と呼ばれる化粧板を貼り合わせたもの。 (※木目をプリントしたシートを貼り合わせたものもある)

無垢フローリング

魅 力
木そのものの風合いや温もり、経年変化が楽しめる。また、木は呼吸をするので調湿性があり、夏のベタつきや冬の冷たさを和らげてくれる。無垢材にしかできない表面加工(意匠)がある。

デメリット
膨張、伸縮するので、施工の難易度が高く、板間に隙間が生じやすいので注意が必要。やや傷つきやすいが、補修もしやすい。床暖房にはやや不向き。

メンテナンス
日頃の手入れは乾拭き。白木は水でもシミになるので注意。自然塗料(オイル)仕上げの場合は、年に1回程度の塗り直しが好ましい。ウレタン塗装の場合は水拭きもでき、10年以上の耐久性が見込める。

価格
樹種や産地にもよるが、基本的に複合フローリングに比べると高価。ただし、高品質で高価な複合フローリングもあり、一概には言えない。

無垢フローリング複合

魅 力
品質が安定していて、膨張、伸縮、反りも少ない。硬度が高いので傷もつきにくく、防音、防水や床暖房対応、フリーワックス、傷防止の加工など、機能性の高い商品が揃っている。デザインも豊富。

デメリット
合板なので接着等に化学物質が使われている。化粧板が厚いと、無垢材と同等の風合いが得られるが、薄いものは劣った印象。傷の補修がやや難しい。

メンテナンス
日頃の手入れは基本的に乾拭き。汚れがひどい場合は中性洗剤を使った水拭きも可能。傷がつくと補修が困難なので年に1~2回程度のワックスがけが好ましい。最近はフリーワックスのものも増えている。

価格
基本的に無垢材に比べると安価。
ただし、高品質のものは、無垢材を上回ることもある。

2 樹種

 木にも個性がある。 樹種ごとの特徴や傾 向もあれば、同じ樹種 でも、育った環境等に よって1本1本異なっ た個性も生まれる。
 今回、取材にご協力 いただいた朝日ウッド テック株式会社では、 「杢匠(もくしょう)」と呼 ばれる木の個性を見 極めるプロが、山や森 に入って原木を選び、 製材の際も、鑑識眼を 持った「木匠(もくしょう)」 がそれらの個性が活か されるよう切り分ける のだそう。
 フローリングを貼る にあたって材を1枚1 枚選ぶまではできない としても、出会ったか らには、その個性を知 って楽しみたいものだ。

※1杢:木目のうち、柾目・板目と異なって稀に現れる複雑な模様。さまざまな外的要因によって現れる。
※2経年変化: 時間の経過とともに起こる樹種特有の色変化や、使い込むほどに深みを増す風合いなど。

代表的な樹種とそれぞれの特徴

Live Natural Premium(朝日ウッドテック)

ブラックウォルナット
北米原産の広葉樹で、世界三大銘木 のひとつ。濃淡のうねりが重厚で落ち 着いた風合いを生み出す。高級家具 などでも人気の木。

Live Natural (朝日ウッドテック)

ブラックチェリー
北米東部原産のサクラの一種。最初は淡い薄紅色がかっているが、徐々に飴色が深くなる、経年変化が美しい木。

Live Natural (朝日ウッドテック)

カリン
唐木の銘木で世界的にも珍重されて いる。紫から深い赤、黄褐色とさまざ まな色彩を放つ。色の組み合わせが 楽しい木。

Live Natural Premium(朝日ウッドテック)

オーク(楢)
「森の王様」の異名を持つ。木目が美 しくどんな空間にも合う人気の材。フ ランク・ロイド・ライトがこの木特有の 虎斑に魅せられ、よく使用したそう。

根杢
根元に現れるコ ブ部分のうねる ような木目模様。

経年変化→

バークポケット
鳥や虫に傷つけ られた部分を補 うように生まれる 杢。

虎斑
柾目面にできる 虎の被毛のよう なオークならで はの斑。

Live Natural (朝日ウッドテック)

シカモア
透明感のある白さと光沢が高貴な印 象の木。きめ細やかな木肌は見る角 度や光の加減で表情を変える。

Live Natural (朝日ウッドテック)

サペリ
アフリカ原産。世界三大銘木マホガニ ーの代替種として愛好されている。リ ズミカルで深みのある木目が美しい。

ecoloquia

メルバウ
インドネシア原産。日本では知名度が 低いが漢字で「太平洋鉄木」と書くほ ど、丈夫で安定性も高く、水や虫にも 強い。プールサイドや船にも使用され ている。

ecoloquia

バーチ(樺桜)※桜とも呼ばれている

カーリー杢
シワが寄って波 のように縮んで 見える木目。「バ イオリン杢」とも 呼ばれる。

リボン杢
木目が順目と逆 目、交互に走って いるため、見る方 向によって濃淡 が逆転する。

ecoloquia

アカシア

3 貼り方

 フローリングにはさ まざまな貼り方があ り、同じ樹種を使って も、その違いで空間の 印象は大きく異なる。 さらに、同じ樹種、同じ 貼り方でも、木目や色 のバランスによっても 変わってくるので、床 を貼る職人の腕やセン スも重要だ。そのため、 複合フローリングの場 合は、ある程度並べて ユニット化した状態で 販売しているケースも 多い。
 また、ピースの幅に よっても表情は変わ る。細いもので 75 ㎜、広 いものでは 150 ㎜のもの もある。最近は、継ぎ 目を減らしてスッキリ 見せようと、太幅のも のが人気だそう。

代表的な貼り方


バーケットフローリング

木片でパターンを構成する寄木張りのフローリング材。パターン単位のパネルで販売されている。中世ヨーロッパの宮殿で見られた寄木の美しい床が起源で、ヨーロッパでは今でも人気が高く、さまざまなデザインパーケットが販売されている。

チェッカー
正方形を市松に組むシンプルなデザイン。学校や公共事業所によく使われる。

ボルドー
フランスのボルドーにある宮殿で使用されているデザイン。

ロンブス
ロンブス(ドイツ語でひし形のこと)を3枚組み合わせて立体感を出すデザイン。

4 表面加工

 無垢フローリング= 単層フローリングは、 削ったり傷をつけたり して、凹凸のある意匠 を施すことができる。 また、すり傷などは軽 くやすりで削ってしま えば消せ、凹み傷など は、スチームで復元さ せることができる。
 一方で、複合フロー リングは化粧板が薄い ので、傷や凹みができ ると再生が難しい。し かし、最近では、基材 や塗膜を使って、それ らの問題を防ぐ力を 備えたものが多い。

保護も兼ねて、自然塗料(オイル)による塗装

木目を活かした仕上げに 使用される。表面に塗膜を つくるのではなく油分を浸 透させるので、肌触りや表 情などを損なうことなく、 保護や撥水にも一役買っ てくれる。素人でも塗れる ので、1年に1回程度は塗 り直したい。透明もありカ ラーも豊富。

ecoloquia
ヴィンテージブラウン

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マホガニーブラウン

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フロストホワイト

模様を彫る

大工道具の「手斧(ちょうな)」を使った伝統的な技法「なぐり加 工」を現代風にアレンジした加工方法。さまざまな文様を立体的 に表現し、なおかつ足触りも心地よい。表情が豊かで華やかな印 象を与えてくれるので、アクセントとして玄関などに使用されるこ とが多い。

ecoloquia
スプーンカット 無垢のみ
スプーンですくったようなデザイン。 足触りがとても良く、人気。

ecoloquia
リップル 無垢のみ
広がる水門のようなデザイン。 空間に流れを感じさせる。

その他の特殊加工

ecoloquia
ダメージ加工
古材風に仕上げるために、ランダム に傷をつけ、塗装でエイジングした もの。

Live Natural Premium Design Line BRUSH(朝日ウッドテック)
うづくり加工
表面にブラシをかけ、柔らかい部分を 削ることによって、木目が立体的に浮き出る。

ウレタン塗装
樹脂ワックスの5~10倍の厚みを持つ 強靭な塗膜で保護するので、耐水性、 耐久性、UVカットにも優れている。住宅 利用であれば、効果は10年以上持続す るが、塗り直しは難しく、プロに依頼す る必要がある。また、天然木の肌触りや 風合いはやや損なわれる。

その他
付加価値を上げるため、各 社それぞれに独自の技術 で基材や塗装等を改良し、 機能性を向上させている。
例えば…
○抗菌性
○ひび割れ防止
○フリーワックス 耐すり傷・凹み傷 など

木以外で フローリングを表現する

水まわりだったり、メンテナンスが困難だったり、賃貸住宅だったり、 場所によってはフローリングを使用するのが難しいことも…。 そんな場合は、他の素材でフローリングを表現してみては? 樹脂のものや磁器のものなど、木目の再現性も高く 中には、凹凸を出し、風合いまで再現しているものもある。

樹脂系床材 でフローリングを表現

クッションフロア
クッション性のあるシート状の床材。 耐水性に優れ、メンテナンスも簡単。 クッション性があるので衝撃を吸収 してくれるのも嬉しい。また、防滑や 消臭などの機能を付加したものも。 施工が簡単な上に比較的安価なの で、気分転換に貼り変えて楽しむこ ともできる。

ロッキーオーク(サンゲツ) さまざまな樹種を表情のばらつきまで再現し、 バラエティ豊かに品揃えされている。

フロアタイル
硬質樹脂でできたタイル状の床材。 エンボス加工で凹凸を出すなど、柄だけでなく、質感の再現性も高く、 耐水性、耐久性にも優れ、防滑や抗菌などの機能を付加したものもある。 簡単に貼ってはがせるものもあるので、賃貸住宅でも楽しめる。

エンボス加工で凹凸を出し、古材の風合いを再現したフロアタイル。オイルウッド(サンゲツ)

タイル(磁器) でフローリングを表現

磁器製のタイルでも、フローリングは再現されている。 他のどんな素材よりも水に強く、汚れもつきにくいのでメンテナンスも簡単。 キズや凹みに強く、耐久性に優れ、色の劣化もないので、 半永久的に当初の美しさを持続することができる。

TANGRAM(名古屋モザイク工業)

佐藤オオキ率いる デザインオフィス「nendo」が 床をデザインする

日本では、一般的にフローリングのデザインと言うと、最終的 に床を貼る職人に委ねられている部分が大きく、本質的に「デ ザイン」の概念からは遠い。2015年、そんなフローリング業界 に革新的な風が吹いた。デザインオフィス「nendo」がデザイン した床が、世界的デザインイベント「ミラノ・サローネ」で注目を 浴びたのだ。「空間に速度を生む」というコンセプトを持ったそ のフローリングの名は「stream」。ただ作品として発表されただ けでなく、すでに広く流通している。またその後も「grid」や 「amida」が発売されるなど、デザインフロアの市場が少しずつ 動き始めている。誰もがインテリアの一部として、家具を選ぶよ うに床を選ぶ時代はそこまできているようだ。

Live Natural Premium Design Line nendo collection [ stream ] 樹種:ブラックウォルナット(朝日ウッドテック)

nendo 佐藤オオキ

デザインオフィス「nendo」代表。建築・インテリア・プロダクトなど、幅広 い分野に渡ってデザインを手がけ、さまざまな賞に輝く。2006年には Newsweek誌の「世界が最も尊敬する日本人100人」に選ばれる。

TOPIC
家をもっと自由に楽しみたい人へ
toolboxの床材

toolboxとは…
壁の色からドアノブひとつまで、空間を自由につくり上げるためのパーツや道具、アイデアが揃うオンラインストア。ありそうでなかったパーツ、あったらいいなと思う素材など、エンドユーザーのニーズに叶ったラインナップで人気を集めている。




取材・写真協力

●朝日ウッドテック株式会社
http://www.woodtec.co.jp
【大阪ショールーム】 大阪市中央区南本町4-5-10 tel.06-6245-9238 fax.06-6271-8694
OPEN:9時 - 17時
CLOSE:毎水曜日・GW・夏期休暇・年末年始

●無垢フローリング・ウッドデッキ専門店
ecoloquia
http://ecoloquia.com
神戸市東灘区本山町北畑657-904
tel.078-862-9936 fax.078-862-9946
OPEN:9時 - 19時(日曜・祝祭日休み)

●toolbox
https://www.r-toolbox.jp
【東京ショールーム】
東京都新宿区下落合3-14-16
OPEN : 13時~17時(日・月曜・祝祭日休み)

●株式会社サンゲツ
https://www.sangetsu.co.jp
【大阪ショールーム】 大阪市北区梅田2-5-25ハービスOSAKA 4F
tel.0570-055-136 fax.06-6347-9811
OPEN:10時 - 17時
CLOSE:毎水曜日(祝祭日除く)・お盆・年末年始

●名古屋モザイク工業株式会社
https://www.nagoya-mosaic.co.jp
【大阪ショールーム】 大阪市中央区備後町2丁目1番1号 第二野村ビル1F
tel.06-6223-8006
OPEN:10時 - 17時(日曜・祝祭日休み)